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三原市芸術文化センター ポポロ 様 / 広島県
Japan / Hiroshima Mar. 2026
三原市芸術文化センター ポポロ 様

広島県三原市にある「三原市芸術文化センター ポポロ」は、世界的建築家・槇 文彦 氏の設計による特徴的な外観と豊かな響きを備えたホールを有する総合文化施設です。開館20周年を迎えるにあたり、2023年に長寿命化改修工事を実施し、ヤマハサウンドシステムが音響機器の改修を担当しました。その音響改修の背景やポイント、施設の運用について一般財団法人 みはら文化芸術財団 三原市芸術文化センター 副館長の砂田 敏晴 氏、舞台管理グループ 副責任者の 柚木 卓也氏にお話をうかがいました。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

一般財団法人 みはら文化芸術財団
三原市芸術文化センター副館長 砂田 敏晴 氏(前列左)
同 舞台管理グループ 副責任者 柚木 卓也 氏(前列右)
(後列左より)
ヤマハサウンドシステム株式会社
営業部 大阪営業所 営業課 西田 将ニ
同 品質管理部 検査課 松岡 亨
同 技術部 大阪技術課 瀬戸 雄貴
同 設計部 システム設計2課 来栖 真弓

建築家・槇文彦氏設計によるユニークな外観と素晴らしい響き

● 最初に、「三原市芸術文化センター ポポロ」についてご紹介ください

砂田氏:
この建物は世界的建築家の槇 文彦 先生の設計によるもので、銀色のドームを冠したアイコニックな外観が特徴です。このドームはすぐそばを走る新幹線の車窓からよく見えるため「あれは何だろう」と興味を持ってスマホで検索し、当ホールを知ってくださる方も多くいらっしゃいます。
愛称の「ポポロ(Popolo)」はイタリア語で「人々」を意味し、公募によって決まりました。当時中学2年生だった女子生徒のアイデアです。非常に呼びやすく覚えやすい名前で、今では市民の方々の間でも「三原市文化センター」より「ポポロ」の方がはるかに通じやすくなっています。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

一般財団法人 みはら文化芸術財団 三原市芸術文化センター 副館長 砂田 敏晴 氏

三原市芸術文化センター ポポロ 様

● 施設の概要を教えてください。

砂田氏:
メインホールは最大1,209席を備え、オーケストラピットや吊り下げ式の音響反射板を有しています。クラシックやアコースティック系の音楽に適した設計となっており、音響面でも非常に高い評価をいただいています。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

ホワイエは、公演のない時は自由にお入りいただけるスペースです。日が差し込む明るい開放的な空間で、散歩のついでに建築を眺めたり、コーヒーを楽しみながら談笑されたりと、市民の憩いの場として親しまれています。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

ホワイエ

リハーサル室や練習室は、ピアノ、ドラムセット、移動型PAセットなどの貸出備品が充実しており、バンド練習やダンスレッスンなど、多目的にご利用いただいています。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

練習室2

● そとの芝生広場やテラスも印象的でした。

砂田氏:
ありがとうございます。芝生広場では、冬期に「ウインターイルミネーション」を実施しており、とてもきれいです。また、槇先生が特に喜んでくださったのが、芝生広場、テラス、そしてホワイエを使った結婚式でした。芝生広場に半円状に椅子を並べてバージンロードを敷き、その後ホワイエでパーティーを行ったのですが、まるで海外のウエディングのようで素敵でした。テラスはコスプレの写真撮影会などにも利用されており、現代的なニーズにも応えています。

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イルミネーション

三原市芸術文化センター ポポロ 様

芝生広場

中四国エリアを視野にした世界基準の芸術発信と人材育成

● ポポロとして、現在どのようなことに力を入れていますか。

砂田氏:
私たちの最大の使命は、優れた芸術を市民の皆さんにお届けすることです。三原市という地方都市でありながら、広島県、ひいては中四国エリア全体を視野に入れ、世界的アーティストの招聘にも取り組んでいます。ここを文化発信の拠点としつつ、地域に文化を根付かせることを目指しています。
その取り組みの一つが、文化ボランティア組織「ポポロファミリー」です。運営業務へのボランティアで、参加特典として公演チケットと交換できるポイント制度を導入しています。地域の方々が主体的に関わる仕組みをつくることで、文化が根付く土壌を育んでいます。

● 「ポポロ・ジュニアスウィング・オーケストラ」の活動についても教えてください。

砂田氏:
開館して間もない2008年頃、映画『スウィングガールズ』の流行をきっかけに「ポポロらしい独自の活動」として発足しました。隣の尾道市にいらした指導者のご協力もあり、現在では県民文化祭などに出演するまでの実力をつけています。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

アナログとデジタルが混在した音響システムから
Danteで統一されたデジタル環境へ

● ホールの音響についてうかがいます。音響についてアーティストからはどう評価されていますか。

砂田氏:
世界的ピアニストであるクリスチャン・ツィメルマン氏がここで演奏された際「自分が裸になるようだ」という言葉を残しました。ご本人いわく、自身のすべてが露わになるほど繊細で、響きが良いそうです。私自身もさまざまなホールに足を運びますが、ここの響きはどこにも負けていないと自負しています。

柚木氏:
このホールは生音だけでも十分に響き、どの席でもよく聴こえます。例えば、音量の小さいクラシックギターの演奏会で奏者の方から「マイクを用意してほしい」と言われることはありますが、実際に少し弾いていただくと「マイクは要りませんね」とおっしゃいます。そのため、公演でPAを使用したことは一度もありません。それほど生音が豊かに届くんです。

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一般財団法人 みはら文化芸術財団 三原市芸術文化センター舞台管理グループ 副責任者 柚木 卓也 氏

● 今回の音響改修で目指したことはなんでしたか。

柚木氏:
まずは機材のアップデートとシステムの統一ですね。開館当時はアナログからデジタルへ移行する過渡期だったこともあって、アナログとデジタルの機材が混在した状態でした。今回はそれらをすべて最新のデジタル機材に一新し、全体をDanteで連携させました。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

音響調整室

また、以前は客席の一部に音が届きにくい場所があったのですが、それはカラムスピーカーにラインアレイを導入することで解消しました。現在はすべての席にクリアな音が届くようになっています。
それからホワイエですね。あの空間はガラス張りの構造上、残響が多く、アナウンスが聞き取りづらいという課題がありました。そこで、新たに天井へスピーカーを配置して、ホワイエのどこにいても明瞭に声が聞こえるよう改善しました。

● 音響調整卓にヤマハのデジタルミキサー「RIVAGE PM5」を選定した理由を教えてください。

柚木氏:
これまで音響調整卓にヤマハの「PM5D」を使用していましたが、サポート終了に伴い「RIVAGE PM5」に更新しました。既存システムが96kHz運用でしたので、96kHz対応であることはマストでした。ちょうど検討のタイミングで「RIVAGE PM5」と「PM3」が発売され、デモ機を試した結果、操作性の良さと機能面から「PM5」を選定しました。ヤマハを選んだ理由は、保守対応やトラブル時のサポート面で信頼が大きかったことです。

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デジタルミキシングシステム「RIVAGE PM5」

高度な集中監視・制御で現場を支える
HYFAXのマトリクスコントローラー「LDM1」、データロガーシステム「DL3 System」

● HYFAXのマトリクスコントローラー「LDM1」、データロガーシステム「DL3 System」の用途について教えてください。

柚木氏:
「LDM1」はマトリクスミキサーとして使用しており、複数のミキサーの出力をいったんここに集約しています。これによりどの卓を使っていても、手元で柔軟にコントロールできます。データロガーの「DL3 System」は、主に出力レベルの監視に使用していますが、温度監視も行っています。以前、アンプ室の空調が故障し、室温が40度以上になったことがありましたが、その際もしっかりアラートが出ました。設定した閾値を超えるとエラーログが残りますし、異常を早期に察知できる点は、運用する上で非常に安心感があります。

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マトリクスコントローラー「LDM1」

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データロガーシステム「DL3 System」監視画面

● 電動吊マイク装置HYFAX「MHN1」を使用した感想はいかがですか

柚木氏:
以前に使用していた吊マイク装置に比べ、使い勝手が格段に良くなりました。前は停止ボタンを押すと急停止して大きく揺れてしまうクセがあったんです。その揺れが干渉につながることもあって気を遣っていました。その点新しい「MHN1」は動きが非常にスムーズで、急停止による揺れが劇的に緩和されました。また、詳細な設定はタッチパネルででき、動作の操作はボタンでできますので、詳細かつ安全な操作ができるようになった点も便利です。

意匠などの制約を越えて最適解を導き出す
音響設計と施工における徹底したこだわり

● ここからはヤマハサウンドシステムの担当者も加わります。まず音響設計を担当した来栖さんに聞きます。今回の工事で特に工夫した点を教えてください。

来栖:
柚木さんが最新機種の導入に非常に意欲的だったため、音響調整卓「PM5」だけでなく、シグナルプロセッサー「DME7」などの新機材を導入しました。これらは当時、使用事例が多くない時期でしたが、柚木さんの「どんどん使いこなしていこう」という積極的な姿勢に背中を押していただきました。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 設計部 システム設計 来栖 真弓

三原市芸術文化センター ポポロ 様

シグナルプロセッサー「DME7」

来栖:
また、仕様を固める前に「これまでの運用」や「これからどう使っていきたいか」について深くお話しできたことも大きかったです。その結果、使い勝手が悪かった部分を可能な限り解消することができました。具体的にはシステム電源のオン/オフですね。当初は誤って電源を落としてしまうことを防ぐため舞台袖と音響調整室でシステム電源を完全に独立させていました。しかし、実際の運用では不便だとのご意見をいただきました。そこで、舞台袖・音響調整室のどちらからでも操作できる仕様に変更しました。今回の検討を通して、「音響システムはそのホールごとに唯一無二のオリジナルである」ということを、あらためて強く認識する機会になりました。

● 施工担当の瀬戸さん、今回の音響工事で特に印象に残っている点はありますか。

瀬戸:
今回の工事は、中国電設工業さんとヤマハサウンドシステムの共同企業体(JV)形式で進めました。地元企業の皆さんは横のつながりが非常に強く、情報共有が驚くほどスムーズで、とても助かりました。私自身も中国電設工業の方と毎日現場事務所に詰め、昼食に尾道ラーメンを一緒に食べに行くなど、個人的にも親しくなりました。ヤマハサウンドシステムとして、この地域の「横のつながり」を得られたことは、大きな財産になったと感じています。

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ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部 大阪技術課 瀬戸 雄貴

● 実際の工事で工夫した点はありますか。

瀬戸:
施工面では、ホールのサイドカラムに設置するラインアレイスピーカーの設置が難所でした。もともとの設置スペースが非常に狭く、壁に干渉する可能性があったためです。そこで施工後のメンテナンス性や角度調整のしやすさを考慮し、専用の枠を使ってスピーカーを吊る構造を採用しました。壁に当たらないギリギリのラインを攻めながらの施工でしたが、無事に納めることができました。

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枠で吊られているサイドカラムのラインアレイスピーカー

瀬戸:
もう一つ工夫した点は、ホワイエのスピーカー施工です。明瞭性を優先するため、露出型スピーカーを選定していましたが、施工段階で「建築意匠的に露出型はNG」という判断があり、そこから機種選定や取り付け方法を再検討しました。最終的に天井にスピーカーを埋め込む形としましたが、意匠を損なうことなく、カバーエリアと明瞭性を十分に確保でき、ご満足いただける仕上がりになったと思います。

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ホワイエのシーリングスピーカー

● 音響調整と測定を担当した松岡さんは、今回の工事でどんなところに気を配りましたか

松岡:
音響調整の立場で特に気を配ったのは、同じくホワイエです。ガラス張りで響きが多く、チューニングが難しい空間でしたが、音がスカスカにならず低域がきちんと残る“リッチなサウンド”を目指しました。
ホールのスピーカーに関しては、工事前がポイントソースのみでしたが、サイドスピーカーをラインアレイ化したことで、後方客席までしっかり音が届くようになりました。さらに、従来通りポイントソースを採用したプロセニアムスピーカーとの特性を整え、自然なつながりを追求しました。スピーカーの角度についても慎重に調整し、必要なエリアを確実にカバーしながら、ホール全体の響きと調和するように自分の耳で確認を重ね、最良のバランスに仕上げました。

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ヤマハサウンドシステム株式会社 品質管理部 検査課 松岡 亨

● 営業担当の西田さんは、最近営業担当を引き継いだそうですね。

西田:
私は改修工事が終わってからの担当となりましたが、ポポロ様と当社との間に築き上げられた非常に強固な信頼関係を、日々肌で感じています。先日マシントラブルの連絡をいただいた際、たまたま近くにいた私が業務の壁を越えて迷わず現場へ急行できたのも『チームの一員として力になりたい』という思いが自然に湧いてきたからです。こうした垣根を越えた連携ができるのは、柚木さんをはじめとするポポロの皆様と、当社スタッフが困難な工事を共に乗り越え、親交を深めてきた歴史があるからこそ。その絆を私も引き継ぎ、一つのチームとして力を尽くしたいと考えています。

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ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 大阪営業所 営業課 西田 将ニ

次代のポポロを支える「舞台人」の育成と、ソフト面のさらなる進化を目指して

● YSSの仕事ぶりについて、改めて感想をいただけますか。

柚木氏:
今回の改修は「長寿命化」が目的で、新しいものを導入するリニューアルというより、開館時の状態に戻すためのリフレッシュが前提でした。建設当時の意匠を守り、外観的には何も変えてはいけないという制約の中での改修工事は、相当に大変だったと思います。また、「二十歳のつどい」という絶対に動かせない締切がある中での工事でしたが、その制約の中でも私たちの要望や使い勝手の改善に最大限応えていただきました。仕様書通りに納めるだけでなく、プロとしてより良い提案をしてくださったことに深く感謝しています。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

● 最後に「三原市芸術文化センター ポポロ」の今後についてお聞かせください。

柚木氏:
せっかくいい機材が入りましたので、それらをきちんと使いこなせるようになることが当面の目標です。

三原市芸術文化センター ポポロ 様

砂田氏:
私たちは現在、2027年の開館20周年に向けて動き出しています。施設を地域の方々に利用していただくというのはもちろんですが、「こんなアーティストが三原に来るの?」と市民の皆さんに驚いていただけるようなイベントを、これからも数多く企画していきたいと思っています。もう一つは人材の育成です。単に場所を貸すだけでなく、自ら事業を企画し、集客し、運営をやり遂げる“舞台人”を育てたい。今回の改修で整ったハードを活かしつつ、ソフト面でもさらに進化していきたいと思います。

● 本日はご多忙中ありがとうございました。

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