池袋西口公園野外劇場 グローバルリングシアター 様 / 東京都
Japan / Tokyo Apr. 2022
池袋西口公園野外劇場 グローバルリングシアター 様
/ 東京都
Japan / Tokyo Apr. 2022
東京有数のターミナル駅、池袋駅西口を出てすぐ、東京芸術劇場に隣接した池袋西口公園に2019年11月「池袋西口公園野外劇場 グローバルリングシアター」が誕生しました。ヤマハサウンドシステムは「グローバルリングシアター」の舞台音響設備、舞台連絡設備の工事を担当。また保守点検にも携わっています。工事時の様子や今後の保守について、豊島区 文化商工部 文化デザイン課 文化施設管理係長 深井 紀知 氏、公益財団法人 としま未来文化財団 施設管理部 施設管理課長 岸本 匡史 氏、同 施設管理部 施設技術課 音響技術グループ 主査 中村 成志 氏にお話をうかがいました。
豊島区 文化商工部 文化デザイン課 文化施設管理係長 深井 紀知 氏(前列中央)
公益財団法人 としま未来文化財団 施設管理部 施設管理課長 岸本 匡史 氏(前列左)
同 施設管理部 施設技術課 音響技術グループ 主査 中村 成志 氏(前列右)
ヤマハ株式会社 音響事業本部 オーディオ事業統括部 空間音響グループ 主任 橋本 悌 (後列左から2番目)
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 主事 五十嵐 拓也(後列左端)
同 品質管理部 検査課 主幹 松岡 亨(後列中央)
同 技術部 東京技術2課 主任 阿部 真(後列右から2番目)
同 システム設計室 河野 峻也(後列右端)
クラシック、演劇など多様な舞台芸術に対応する都市型野外劇場
● 「池袋西口公園野外劇場 グローバルリングシアター」の概要について教えてください。
深井氏:
池袋は駅を中心として東口、西口それぞれに街があります。東口は「サンシャインシティ」などの大型商業施設が多く、西口には「東京芸術劇場」があります。豊島区は「豊島区国際アート・カルチャー都市構想」を謳っており、文化を基軸としたまちづくりを目指して、「東京芸術劇場」に隣接した池袋西口公園に新しいランドマークとなる野外劇場を作ろう、ということで「グローバルリングシアター」が誕生しました。
豊島区 文化商工部 文化デザイン課 文化施設管理係長 深井 紀知 氏
● ターミナル駅の一等地の繁華街にある野外劇場は、かなり珍しいのではないでしょうか。
深井氏:
大変珍しいと思います。野外劇場は音響環境として不利な面もありますが、「グローバルリングシアター」は豊島区の文化の中心ということで、音楽、それも特にクラシック音楽を演りたいという強い思いが区長にはあったようです。そのため舞台に音を前面に反射する大型の音響反射板を用意するなど、音響には非常にこだわりました。また音響反射板だけでなく、ヤマハの音場支援システムを導入し、野外でありながらクラシックの演奏を存分に楽しめる施設になっています。
●「グローバルリングシアター」では毎週定期的にクラシックのコンサートを開催されていると聞きました。
深井氏:
はい。コロナ禍で休止していた期間もありますが、豊島区の主催で毎週水曜日の19時からクラシックを基本としたコンサート「Tokyo Music Evening Yube」を行っています。駅に近い繁華街という立地を活かし、より多くの方に聴いていただきたいと思っています。
毎週水曜日の夕方に開催されている「Tokyo Music Evening Yube」(写真指揮は西本智実氏)
● ほかにはどのような用途で使用されているのでしょうか。
岸本氏:
当劇場は貸出し施設でもあり、さまざまな催しを行っています。2019年11月のオープン直後から新型コロナウイルスが広がりはじめ、なかなか思うようには貸し出しができないのが現状です。そんな中、「東京芸術祭」や、東京芸術劇場と連携した「サラダ音楽祭」などを行っています。
公益財団法人 としま未来文化財団 施設管理部 施設管理課長 岸本 匡史 氏
野外劇場で響きを付加するヤマハ音場支援システム「AFC」
● 音響機器についておうかがいします。まず特徴的なのは音場支援システム「AFC」ですが、どのような理由で導入されたのでしょうか。
岸本氏:
そもそも野外の劇場でありながらクラシックを楽しめる劇場というコンセプトがありました。舞台上に音響反射板は用意しましたが、それだけでは音量も響きも足りないということで、自然な響きを電気的に付加する音場支援システムの導入を検討しました。音場支援システムは劇場やホールのような屋内空間に導入することが一般的のようですが、野外劇場にも有効であるということで導入に至りました。
アンプ室に設置された音場支援システム「AFC」
ステージ上部に設置されたAFC用収音マイク
周囲の柱にはオーディエンスを囲むようにAFC用のスピーカーが6カ所、計12台設置されている
バックヤードに設置されたシステム制御パネル
● 実際に「AFC」を使用してみて、音の印象はいかがでしょうか。
岸本氏:
非常に自然な響きで、コンサートホールで聴いているのと同じような印象を持ちました。ストレスなく普通にコンサートが聴けていることに「あれ、おかしいぞ?」とあとで気づくぐらい自然な響きだと思います。よくよく考えると野外でコンサートホールのような響きが生まれるはずはありませんが、響きが自然なのでお客さんは音場支援システムの存在に気づいていないでしょうね。
深井氏:
私も非常にいい響き、いい音だと思いました。せっかくなので、このポテンシャルを試したい、という気持ちが起きて最初の頃はついつい音が大きくなってしまうこともありました。その後音量を見直し、今はちょうどいいところで落ち着いています。
● 中村さんは「AFC」を実際に操作されているそうですが、使ってみてどんな印象ですか。
中村氏:
音響オペレートを担当する時だけでなく、外部のエンジニアさんが乗り込みで来られたときも「AFC」は私が調整しています。先ほど岸本が申し上げたように、「野外なのにきれいな響きがある」というよく考えるとおかしなことが起きているわけですが、それをいかに自然に聴かせられるかが「AFC」の使いこなしのポイントだと思います。能力としては残響室のように不自然なほど深い響きを出すこともできますが、それでは導入した意味がありません。野外であることを忘れてしまうような、でも響きが加えられていることに気づかないぐらいの自然な印象になるように心がけています。
公益財団法人 としま未来文化財団 施設管理部 施設技術課 音響技術グループ 主査 中村 成志 氏
● 操作にあたって注意している点などはありますか。
中村氏:
野外ですからその日の天候や気温、湿度で響きが変わりますし、ここは客席エリアの地面が石なので、夏場は夕方になってもかなり暑いですし、冬場は逆にすごく冷えます。こうした状況は時間帯でも変わりますから、昼リハーサルで夜本番といった場合はリハと本番が同じ設定でいいとはかぎりません。その設定のさじ加減でずいぶん響きが変わってくるので、可能な限り客席で実際の響きを聴きながら「AFC」をリモート操作で調整しています。
● 客席からリモコンで「AFC」を操作するのですか。
中村氏:
Wi-FiでiPadをつないで「ProVisionaire Touch」画面で「AFC」をリモート操作しています。響きってやはりその瞬間の音なので、そのときに現場で聴かないと、初期反射がどれぐらいなのか、サスティンがどう伸びているのかなどがわかりません。「AFC」は客席でのリモート操作ができるのでとても使いやすいと思います。
「AFC」は機器のリモートコントロール、モニタリングが可能なアプリケーションソフトウェア「ProVisionaire Touch」により iPadでのリモートコントロールが可能
NEXOスピーカーによるパワフルな再生系と、誰にでも扱いやすいデジタルミキサー ヤマハ「QL1」
● 先ほど音量のお話がありましたが、メインスピーカーとして導入したNEXO「GEO M10」で構成されたラインアレイシステムの音や使い勝手はいかがでしょうか。
中村氏:
NEXOらしいいい音ですし、音量も十分出ています。ここは繁華街の真ん中の野外なのである程度の音量は必要なんですが、パワーは十分ですね。この周辺は店舗やオフィスが多く、音量を出し過ぎたり低音を強調しすぎると周囲施設などにご迷惑をおかけしますので、特に注意をしています。
NEXO「GEO M10」のラインアレイシステムがメインスピーカーとしてステージ上部の左右に設置されている
● 調整卓にはデジタルミキシングコンソール「QL1」を導入していただきました。使用感はいかがでしょうか。
中村氏:
「QL1」はまさにヤマハの定番ですよね。私自身はその前のDMシリーズを使っていた世代ですが、今ではすっかりQLシリーズやCLシリーズに慣れました。使い勝手の良さもさすがにヤマハですし、「QL1」なら外部のエンジニアが来ても扱えるので問題ありません。iPadで操作できるアプリ「QL StageMix」を使って客席でミックス作業をすることが多いですね。
バックステージに設置された「QL1」
iPadでQL1がリモート操作できる「QL StageMix」
● 伝送はDanteを使用しているのでしょうか。
中村氏:
基本的にDanteネットワークをしっかりと入れています。館内ではどこにでもネットワークオーディオを使うような環境は整えられていますし、客席側にも引き回してあります。Danteはほぼ業界のデファクトスタンダードですので、乗り込みの方にとっても使いやすい環境が提供できていると思います。
Dante用L2スイッチヤマハ「SWP1-8」
舞台裏コネクター盤
客席の野外エリアに設置されたコネクター盤
ヤマハサウンドシステムは「劇場づくり」の良きパートナー
● このたびヤマハサウンドシステムは音響機器などの工事を担当しました。ここからはヤマハサウンドシステムと「AFC」の開発に携わったヤマハの担当者も参加させていただきます。「グローバルリングシアター」の音響工事で大変だった点はどんなところでしたか。
阿部:
私は現場の施工管理を担当しましたが、「野外劇場」ということが最も大変な点でした。常設の野外劇場ってあまり聞きませんし、私自身も初めてでした。「グローバルリングシアター」は公園内にあり、常に不特定の人がいる状況です。野外ですからスピーカーの取り付け金具やケーブルなどには雨や日射などに対する耐候性が求められますし、落下などのリスクに関しても、施工方法を何度も検討して特に注意を払いました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部 東京技術2課 主任 阿部 真
● 野外での使用例があまりなかったという音場支援システム「AFC」についてはいかがだったでしょうか。
橋本:
私はヤマハでAFCシステムの開発に携わっており、「グローバルリングシアター」では「AFC」の調整を担当しました。「AFC」は劇場の音響特性を測定し、その特性を生かして響きを創成するシステムですが、この「グローバルリングシアター」は野外なのでどうしても測定時に街の音が入ってしまいます。また、他の工事が同時進行していましたので、その工事音もありました。ですから他の工事が休憩の時間を狙って測定をするなど、いろいろ苦労をしました。「グローバルリングシアター」は街の音と共存することが重要と考え、「AFC」の調整についても通常の劇場とは違うものにしました。具体的にはコンサートホールのような豊かな響きをもつ「コンサートホールモード」と教会のような長い響きをもつ「教会モード」の2つのプリセットを用意し、街の音に埋もれないように通常よりも長めの響きとなるように調整しました。
ヤマハ株式会社 音響事業本部 オーディオ事業統括部 空間音響グループ 主任 橋本 悌
● 中村さん、「AFC」の2つのプリセット設定はかなり違う響きですか。
中村氏:
全然違います。クラシックでも壮大なものは「教会モード」を使いますし、小編成の演奏の時は「コンサートホールモード」で、リアルな響き感を出すことが多いです。「Tokyo Music Evening Yube」でイルミナートフィルハーモニーオーケストラが出演した際、指揮者である西本智実さんが「AFC」の響きが音楽的だということで非常に気に入られて、そこから西本智実さんの「MS音楽感動共創プロジェクト」につながったりしています。そのくらい「AFC」の自然な響きはアーティストの創造性に寄与するものだと思います。
● 河野さんはどんな点で苦労されたのでしょうか。
河野:
「AFC」も「QL1」もiPadでのリモートコントロールに対応していて、「グローバルリングシアター」は調整室が舞台裏にあるため、リモート操作の比重が高いんですが、野外の、しかも繁華街でのWi-Fiということで安定した接続性を確保するのに苦労しました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 システム設計室 河野 峻也
● ここはいつも多くの人がいますし、今時はみんなスマホをいじっているのでかなり厳しい状況ですよね
河野:
そうなんです。想像以上にオフィスやショップのWi-Fiが飛び交っており、まさに電波との戦いでした。
● 松岡さんはいかがでしょうか。
松岡:
私はNEXOを中心とした音響調整を担当しました。音響調整をする時は必ずスピーカーの向きや設置角度の微調整を行うのですが、「グローバルリングシアター」の音響調整時に土砂降りの雨に降られ、カッパを着込んでの作業になりました。
街の騒音や工事の音の中で音響調整を行うことに苦労しました。調整はスピーカーから音を出して行うのですが、スピーカーから離れるとスピーカーの音が街の音でマスキングされて聴こえにくくなってしまいます。工事中に大きな音を出して周辺地域の方にご迷惑をおかけしてはなりませんので、音量を下げてスピーカーから近い場所で聴き、離れた場所の音質を予想しながら感覚的に補正しました。明瞭性を確保できるよう、イコライザーで補正するたびに公園内を隅々まで歩き回って自分の耳で音質を確認し、最終的にはどの場所でも明瞭に聴こえるよう調整できました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 品質管理部 検査課 主幹 松岡 亨
● 五十嵐さんはいかがですか。
五十嵐:
私は営業なので工事のお仕事をいただくのも大切ですが、劇場ができあがってからのお付き合いが本当のスタートだと思っています。実際に劇場が動き出してから、いろいろなご要望をいただいていて、それを弊社スタッフと相談をしながらソリューションをご提案しています。たとえば先ほどのWi-Fiの安定接続の話も、オープン時点から、Wi-Fiアクセスポイントをいろんな場所に置いて試し、受信状態が良好な場所に移設しました。また音量管理についても、音量を数値でリアルタイムに監視する方法をご提案したところ手応えを感じていただき、騒音計を導入いただきました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 主事 五十嵐 拓也
● ヤマハサウンドシステムは今後「グローバルリングシアター」の保守も担当します。今後私たちに期待することを教えてください。
岸本氏:
ここは公園でもありますから、やはり安心・安全を最優先した保守を行っていただきたいと思います。特に雨、風、日射など過酷な環境の中で音響機器が設置されていますので、しっかりと点検していただきつつ、その上でよりよい音響環境にしていきたいと思います。期待しています。
中村氏:
ヤマハサウンドシステムさんは今までもこちらからの要望に真摯に対応していただいて満足しています。しかも我々の要望を単に返すのではなく、より使いやすくなるようプラスアルファで返してくれるのが嬉しいです。今後はぜひ新しい機材の情報やトレンドなどをインプットしてほしいと思います。例えば5年後、10年後に改修の話がでた時、今ある機器にこれを足せばこんなことができますよ、といった提案をしてもらえるのがヤマハサウンドシステムさんの強みだと思うんですよね。これからは長い時間をかけて「劇場」という作品作りをやっていくような気持ちでいて、ヤマハサウンドシステムさんはともにこの劇場を作り上げる大切なパートナーだと思っています。これからもよろしくお願いします。
● 本日はご多忙の中、ありがとうございました。
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